トロンボーンの特徴はスライド!音色・歴史などから魅力を解説
トロンボーンは特徴的な見た目から、興味を持つ人が多い楽器のひとつです。
吹奏楽部の体験入部やブラスバンドが演奏しているところを見て、「トロンボーンかっこいい!」と思う人は多いはず。
金管楽器らしい輝いている見た目もかっこいいですが、意外にも正反対な穏やかな一面も持っています。
そこで今回は、トロンボーンの特徴を知らない人向けに音色や歴史などをまとめました。
トロンボーンの特徴は、あの伸びたり縮んだりするスライド以外にもたくさんあります!
トロンボーンの魅力を存分に感じられる内容になっているため、ぜひ参考にしてみてください。
トロンボーンの特徴を分かりやすく紹介!音源あり
トロンボーンの特徴といえば「スライド」です。
「トロンボーンの特徴は?」と聞かれたら、多くの人がジェスチャーつきで「伸ばしたり縮めたりするやつ!」と答えるのではないでしょうか。
本章ではトロンボーンおなじみのスライドはもちろん、音色や楽器の仕組みなどを画像や動画をまじえて解説します。
最大の特徴はスライド
トロンボーンの最大の特徴であるスライドは、右手を使って管を入れたり出したりして音を変える機能です。
実はバルブ式のトロンボーンもあるよ!
一般的に使われているのはスライド式で、トロンボーンならではの音の変え方。
下記の動画は、モーリス・ラヴェル作曲『ボレロ』でトロンボーンがソロを吹いているシーンです。
スライドの動きがよく分かります。
引用 YouTube
トロンボーンのスライドには「この音はこの位置」という印はありませんが、ポジションがあります。
トロンボーンには0~7のポジションがあり、トランペットやユーフォニアムなどのようにバルブと同じ役割を担っています。
出したい音によってその位置へスライドを動かし、音程を変えます。
奏者の練習や経験からポジションを身に着けていき、スライドで微妙な音程の調整も可能です。
そのほか金管楽器の特徴をまとめた記事はこちら↓
トランペットの特徴を知りたい人は集合!音色・音域・歴史などを紹介
ユーフォニアムの特徴は?音色・音域・歴史などを初心者向けに解説!
トロンボーンはスライドを活かし、曲中でグリッサンドが登場する機会が多いです。
グリッサンド奏法はピアノやそのほかの管楽器でも用いますが、トロンボーンの得意技と言っても過言ではありません。
混同されやすいグリッサンドとポルタメントの違いはこちらをクリックして表示↓
- グリッサンド…音感を等速で移動する
- ポルタメント…次の音へ移るのを直前まで待って素早く変える
私は小学3年生ごろから小学6年生まで、金管バンドクラブでトロンボーンを担当していました。
トロンボーンを選んだ理由は、スライドがかっこよかったから。
トロンボーンの特徴であり最大の魅力であるスライドは、ほかの楽器にはないかっこよさがあり憧れますよね。
音色は男性の声に近い!?
トロンボーンの音色は、男性の声に近いと言われています。
理由は2つ。
音域が声楽のテノール音域とほぼ同じで、ほどよく音が太いからと考えられます。
私はトロンボーンと同じ音域のユーフォニアムも吹いた経験があります。
トロンボーンの方が力強い音色で、ユーフォニアムは柔らかさがあり、丸みのある音色のため少し中世的なイメージ。
同じ音域でもそれぞれ音色の特徴は違います。
トロンボーンの音色は力強さだけでなく、曲のなかでさまざまな表情を見せてくれます。
私はトロンボーンには3つの顔があると考えています。
- 迫力のある一面
- 優しい一面
- コミカルな一面
金管楽器らしいとえば、楽器がビリビリと振動するほど迫力のある一面です。
トロンボーンはパリッとした音を出すことができ、トランペットと同じくザ・金管楽器な音色。
ベルが真っすぐ向いているため直管楽器とも呼ばれ、音が直接的に届きます。
正反対な一面もあり、優しい音色もトロンボーンの魅力。
柔らかい音で穏やかな旋律を吹いたり、甘い音色でロマンティックな表現もできます。
下記動画のヤン・ヴァン・デル・ロースト作曲『アルセナール』では、トロンボーンがあたたかい音色でハーモニーを美しく奏でています。
引用 YouTube
『アルセナール』は吹奏楽の定番曲です。
曲中では、トロンボーンの堂々とした威厳のあるフレーズと美しいハーモニーの両方を楽しめます。
昔は教会音楽のみで使われているほど神聖な楽器でしたが、トロンボーンはコミカルな一面もあります。
下記の動画は、メレディス・ウィルソン作曲/J.ボコック編曲『76本のトロンボーン』です。
最後にトロンボーンのグリッサンドがたくさん登場します。
引用 YouTube
金管楽器らしい音色にグリッサンドが加わることで、トロンボーンの面白い一面を感じられますね!
音が出る仕組み
引用 ヤマハ
上記画像は中学校・高校・プロの吹奏楽などでよく使われている「テナーバストロンボーン」の各パーツの名称です。
トロンボーンはマウスピースに口をあて、息を吐きながら唇を震わせて音を出します。
すべての金管楽器は唇を震わせて音を出すよ!
唇の振動が楽器に伝わって管の中に息が通り、朝顔のような形をしたベルから音が広がります。
音程はスライドを主に8箇所のポジションに動かして変え、微調整はスライドの微妙な位置や口で調整。
チューニング(音程を合わせること)では、通称「チューニング管」の主管抜差管を抜いたり入れたりして規定の周波数に合わせるのが基本。
トロンボーンの種類によりますが、F(エフ)管機能がある場合はF管のチューニングも行います。
上記画像のようにFレバーがあると遠いポジションを使わずに演奏でき、低音域の幅も広がる利点もあります。
基本的にテナーバストロンボーンにはF管機能がついており、その利便性から近年はテナートロンボーンよりも人気が高いです。
仲間の楽器と活躍の場
トロンボーンには仲間の楽器が約5種類あります。
- ソプラノトロンボーン
- アルトトロンボーン
- テナートロンボーン
- テナーバストロンボーン
- バストロンボーン
すべてのトロンボーンはテナートロンボーンの形がベースになっています。
ソプラノは現代ではほとんど使われていません。
アルトはまれにソロ楽器として使われることがあります。
テナーよりも低音域を充実させたのがテナーバスです。
テナーバスは現代におけるトロンボーンの主流になり、吹奏楽・ジャズ・ビックバンドなど幅広く活躍しています。
またテナーバスには中細管と太管の2種類がありますが、音の豊かさや継続して使うことを考えると太管がおすすめです。
ただし太管は管が太くなる分肺活量や体力が必要になるため、小学生等の子どもには中細管が扱いやすいです。
ヤマハのYSL-820G2は、初心者や初めて楽器を買う方におすすめな定番のテナーバストロンボーン。
太管で付属品も充実しており、トロンボーンのなかでは比較的に購入しやすい価格帯です。
バスは基本的にはテナーバスと同じですが、管を1つまたは2つ追加して低音域を補っています。
またマウスピースの口径(口に当てる部分)が大きいものを使い、低音域を出しやすくしています。
バスは吹奏楽の大編成やオーケストラなどで活躍し、1つの編成に1本のみで使われることがほとんどです。
トロンボーンの音域は上限なし!?レベル別で解説
テナーバストロンボーン(以下トロンボーンと呼ぶ)の音域を解説します。
アマチュアを一般的な音域、プロ奏者をプロの音域としてレベル別にまとめました。
トロンボーン用の記譜方法で書くため、分からない場合は補足で書くドレミやドイツ音名を参考にしてください。
一般的な音域
トロンボーンの一般的な音域は、下第1線のE(ミ)から上第4線のB(シ♭)まで。
吹奏楽・アンサンブル・オーケストラを部活や趣味でやる程度であれば、十分な音域です。
私の経験上、高音域は上第3線のG(ソ)までが多かったです。
プロの音域
トロンボーンのプロの音域は、下第2線のB(シ♭)から上第4線の1オクターブ上のBまで。
上第4線のBより1オクターブ上のBは、ダブルハイBと呼ぶよ!
とくにスタジオミュージシャンは高音域を使う機会が多く、ダブルハイBを余裕で出すプロもたくさんいらっしゃいます。
今回は音域の上限を作りましたが、金管楽器は息のスピードや口の微調整で音程を変えられるため目安の音域です。
吹奏楽やオーケストラであれば、頻繁に使うのは一般的な音域とさほど変わりません。
トロンボーンの歴史はトランペットが起源!?
トロンボーンの歴史は、トランペットと深い関係があります。
現代の呼び名「トロンボーン」は、イタリア語でトランペットを意味する「toromba」に「one(大きいを意味する接続語)」をつけたもの。
ドイツ語ではトロンボーンを「Posaune(ポザウネ)」と呼び、もともとトランペットを意味する言葉でした。
語源や呼び名から、トロンボーンはトランペットの親戚だと考えられていたことが読みとれます。
違いはやっぱりスライド?
トロンボーンのスライド(二重管)は、ピストンバルブやロータリーよりも単純な仕組みです。
トランペットやホルンなどは、バルブシステムが開発されるまでは吹き口とベルがあるだけのシンプルな構造でした。
トロンボーンは金管楽器のなかでも、昔から構造が大きく変わっていない非常に歴史の古い楽器です。
15世紀ごろに誕生
トロンボーンは15世紀(1401年~1500年)ごろに誕生したと言われています。
残念ながら現代のトロンボーンに至るまでの発案者や製作者は、明確に分かっていません。
当時のヨーロッパは、ルネサンス(美術・建築・文学などの古典様式の復興運動)最盛期を迎えていました。
一方、日本は足利氏による室町幕府の全盛期の時代。
18世紀以前は、当時のトロンボーンをフランス語で「saqueboute(サクブート)」英語では「sackbut(サクバット)」と呼んでいました。
「saqueboute(サクブート)」と「sackbut(サクバット)」の語源は、フランス語の「sacquer(剣を引き出す)」が語源と言われています。
当時のトロンボーン(サクバット)は、現代よりも小ぶりでとくにベルの広がりが小さいです。
現存する最古のトロンボーンは、エラスムス・シュニッツァーが1551年に制作したテナーサクバットだと言われています。
以下の動画はサクバットを使用したアンサンブルで、ジョバンニ・ガブリエリ作曲『サクレ・シンフォニーエ第1巻』「祝福された乙女」です。
引用 YouTube
サクバットは素朴で温かみのある音ですね。
トロンボーンは神の楽器?
人間の声域に近く宗教的な場の合奏でハーモニーを奏でるサクバットは、「神の楽器」として扱われるようになりました。
人間の宗教の歴史に深く関係しており、教会にはトロンボーンを吹く天使の絵が装飾されていることもあります。
サクバットは教会音楽で用いられることが多く、聖歌隊の伴奏に重宝されていました。
当時の金管楽器のなかで、唯一自由に半音階を演奏できたからです。
またスライドによる微妙な音程の調整もできたため、声楽の音程にも合わせやすい点も理由です。
18世紀以降に至るまで、教会以外で演奏されることは少なかった!
教会音楽で使われることから神聖な楽器として扱われ、オーケストラへの導入も遅れたと言われています。
作曲家たちも、ミサ曲やオラトリオなどの宗教的な音楽以外ではトロンボーンの使用を控えていたそうです。
ベートーヴェンがトロンボーンをオーケストラの世界へ導いた
教会音楽での活躍にとどまっていたトロンボーンですが、ついにオーケストラへの導入が本格化します。
初めて交響詩にトロンボーンを導入したのは、ベートーヴェン作曲『交響曲第5番ハ短調Op.67』で「運命」の名で親しまれている作品です。
引用 YouTube
その後もベートーヴェンは『交響曲第6番Op.68』「田園」や『交響曲第9番Op.125』(合唱付き)でもトロンボーンを使用しました。
ベートーヴェンが交響曲への使用を積極的に行ったことで、19世紀にはトロンボーンがオーケストラに定着していきました。
まとめ
- トロンボーンはスライドを伸ばしたり縮めたりして音を変える
- 男性の声に近い音色で、迫力のある音から穏やかな音まで自由自在
- 一般的な音域は、五線譜の下第1線のEから上第4線のBまで
- プロの音域は、五線譜の下第2線のBから上第4線の1オクターブ上のBまでが目安
- トロンボーンはトランペットの親戚と考えられていた
- 昔のトロンボーン(サクバット)が神の楽器と言われていたのは、教会音楽で用いられる機会が多かったから
スライドによるグリッサンドをはじめ、1曲のなかでさまざまな一面を魅せてくれるトロンボーン。
トロンボーンならではの特徴が多くあることから、人気の高い楽器だと考えられます。
ぜひトロンボーンの音を聴いて、たくさん魅力を発見してくださいね。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません